国際バカロレアのメリット・デメリット
グローバル教育に関心のある親御さんなら、一度は耳にした事があるはずの「国際バカロレア」「IB」。子供をIB教育を実施している学校へ行かせれば、世界中の大学に入学できるみたい!と、具体的な内容を知らなくてもIBが取得できるインターナショナルスクールにこだわる親御さんが最近増えているとか。
国際バカロレアは、単に日本の「高卒認定」(旧大検)の国際版ではありません。国際バカロレア(International Baccalaureate)とは何か、そのメリット・デメリットについてお伝えしたいと思います。
まず話題のIB(International Baccalaureat)ってなに?
バカロレアは今から50年前の1968年にスイスのジュネーブにあるインターナショナルスクールで生まれました。
そのころのジュネーブは世界の国際機関が集まる都市で、そのインターにはいろいろな国の子が通っていました。その子供たちが高校3年生になった時、自分の国の大学に行こうとしたら、国によって試験が異なるという問題が起こりました。しかし、ひとつの学校で何十カ国もの試験の対応はできない。そこで、世界共通の成績証明書のようなものをつくれないだろうか、と先生たちがプログラムを考えたのです。
世界各国の子どもが対象なので、一国主義ではなく、世界平和に寄与し、多様な価値観や文化を理解し、尊重することがバカロレアプログラムの理念になりました。人の違いを認め、よりよい平和な世界に貢献する、探求心や好奇心、思いやりに富んだ子どもを育成すること。そして生涯にわたって学び続けること。学びというのは学校で終わりではなく、生涯にわたって続くものだから、学び方を学ぶというのがバカロレアのミッションとなります。
IBプログラムってどんなプログラム?
プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP) 【1,315校 (国内:19校)】
3歳~12歳を対象として、精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラム。どのような言語でも提供可能。1997年設置。
ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP) 【1,210校 (国内:9校)】
11歳~16歳を対象として、青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。どのような言語でも提供可能。1994年設置。
ディプロマ・プログラム(DP) 【2,908校 (国内:26校)】
16歳~19歳を対象としたプログラムであり、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能。原則として、英語、フランス語又はスペイン語で実施。1969年設置。
キャリア関連プログラム(CP)
16~19歳を対象として生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視し た、キャリア教育・職業教育に関連したプログラム。一部科目は英語、フランス 語又はスペイン語で実施。2012年設置。
DPのカリキュラムは、以下の6つのグループ(教科)及び「コア」と呼ばれる3つの必修科目があります。生徒は、6つのグループから各教科ずつ選択し、6科目を2年間で学習します。ただし、「芸術」(グループ6)は他のグループからの科目に代えることも可能です。
グループ名
科目例
1 言語と文学(母国語)
言語A:文学、言語A:言語と文化、文学と演劇
2 言語習得(外国語)
言語B、初級語学
3 個人と社会
ビジネス、経済、地理、歴史、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、心理学等
4 理科
生物、化学、デザインテクノロジー、物理、コンピューター科学、環境システム
5 数学
数学スタディーズ、数学SL、数学HL
6 芸術
音楽、美術、ダンス、フィルム、演劇
必修科目
・課題論文(EE:Extended Essay)
・履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめたり、知の理論(TOK:Theory of Knowledge)
・「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるようにする為の学習最低100時間、創造性・活動・奉仕(CAS:Creativity/Action/Service)
IBディプロマを履修するメリット
・イギリスで主流の教育、Aレベルと比べると科目数も多い分(Aレベルは3科目、IBは6科目)知識に偏りがあまりないといえる。
・イギリスの大学やEUの大学で高く評価されている。(特にカナダの大学ではかなり評価されているようです。 )
・近年アメリカの上位大学でも、IBディプロマ取得者の合格率が高くなってきている。
IBディプロマを履修するデメリット
・毎週3~4時間の社会体験活動(ボランティア活動など)が課される。そのため、奉仕の精神より資格取得の為仕方なくボランティアをするようになる子もいる。
・卒業時に必ずもらえる資格ではない。DPのコースを選択し、2年間勉強をしても全員がディプロマを取得できるわけではない。
・IBディプロマのコースを取ると、授業料が高くなる。
・教員の質による差がものすごく激しい。
・日本の進学校の高校と比較した場合圧倒的に授業時間が少ない。
・数学のレベルが圧倒的に低い。IBの数学だけで日本の一流大学の理系進学には問題があると思われる。
・アメリカの大学に出願する場合、SATを受ける必要があるので、ただIBで高得点をとればよいというわけでない。
日本の学習方法とはあまりにも違うので、IBディプロマ資格を取るにはプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)で小学生のうちから、そのような思考や表現力を身につけておいた方が有利といえるでしょう。ただ、日本でPYPを受けられるのは19校、ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)に至っては9校というのが現状です。
AレベルかIBか
IBは、様々な文化の理解と尊重の精神を通じ、より良い平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成という理念のもと、様々なプログラムが組まれています。IBのカリキュラムは幅広く、2つの言語、文系科目、理系科目の1つ、数学、美術の6科目で構成されています。また、コミュニティサービスや、拡張エッセーの提出が義務付けられており、「知識の理論」をカバーしています。
Aレベルは、少数の科目(最低3科目)をより深く掘り下げて学び、コースワークと最終試験に重点が置かれています。学生は、1年目にASレベルを通常4~5科目学び、その後、得意な科目を選んでAレベルに進みます。AレベルがIBに比べて優れている点は、苦手な科目や興味のない科目を捨てて、自分が最も好きで自信のある分野を勉強できることです。すべての生徒が芸術の才能、数学のスキル、文学の適性を持っているわけではなく、他の分野で優れた能力を持っているので、Aレベルではそれを探り、広げることができます。
私の周りでは、IB校に入学したものの、多くの科目を取ることが嫌でAレベルに変更したいう話も聞きますので、お子さんの得意科目や特性を理解したうえで、AレベルかIBかを選ぶことが重要ですね。
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